単なるPC修理と思えば、データ復旧まで必要な作業に

※この記事は過去の事例をもとに、情報を現在の状況に合わせて加筆・リライトしたものです。

今回は「PCが起動しなくなった」という修理依頼でお預かりしたところ、HDDにヘッド吸着という重篤な物理障害が判明し、PC修理とデータ復旧を並行して実施した事例をご紹介します。

目次

目次

  1. 状況:起動しないNECデスクトップPC、バックアップは長期間なし
  2. 診断:Seagate ST250DM000に物理障害(異音・モーター停止)
  3. ヘッド吸着とは何か
  4. クリーンベンチでの開封処置
  5. データ吸い出しとAFT HDDへのクローン作成
  6. PC修理完了・納品
  7. 物理障害HDDで絶対にやってはいけないこと

状況:起動しないNECデスクトップPC、バックアップは長期間なし

法人のお客様よりNEC製デスクトップPCが起動しなくなったとのご連絡。確認するとバックアップはしばらく取られておらず、業務データが失われると業務継続に支障が出る状況でした。

お預かりしたNECデスクトップPC
お預かりしたNECデスクトップPC

診断:Seagate ST250DM000に物理障害

内蔵HDD(Seagate ST250DM000・250GB SATA)に通電すると「ビービービー」という異音が発生しており、スピンドルモーターが回転していない状態でした。

症状推定原因対応方法
カチカチ音(クリック音)ヘッドの繰り返し退避・読取失敗クリーンルーム開封・ヘッド交換
ビービー音・モーター停止ヘッド吸着(今回)クリーンベンチ開封・ヘッド退避処置
全く音がしない基板故障・電源系統の断線基板交換・部品補修
認識するが遅い・エラー多数不良セクタ多数専用ツールでセクタバイセクタ読み出し

ヘッド吸着とは何か

HDDの磁気ヘッドは通常、プラッタ表面に触れずに浮上した状態でデータを読み書きします。電源オフ時はヘッドが安全な退避場所(ランプ)に移動しますが、何らかの原因でプラッタ表面に貼り付いてしまうことがあります。これをヘッド吸着と呼びます。

⚠️ ヘッド吸着が疑われる場合は通電を繰り返さないこと
通電のたびにモーターとヘッドにダメージが蓄積し、プラッタ表面に傷がつき復旧不能になるリスクがあります。

クリーンベンチでの開封処置

クリーンベンチ内でHDDを開封し、ヘッドを安全な位置に退避させる処置を行いました。処置後、HDDが正常に認識されることを確認しました。

データ吸い出しとAFT HDDへのクローン作成

ヘッド退避処置でHDDが認識できるようになったら、できる限り速やかにデータを別のHDDへ転送します。処置後のHDDは非常に不安定で、いつ再度認識不能になってもおかしくないためです。

データ吸い出し作業中
データ吸い出し・クローン作成作業中

今回のHDDはAFT対応品でした。適切なアライメント調整を施したクローンHDDを交換用HDDへ複製しました。

クローン作成・複製作業
交換用HDDへのデータ複製作業

PC修理完了・納品

復旧したHDDのWindowsシステムを修復し、PCに組み込んで正常起動を確認。データも完全に保持された状態で納品しました。

物理障害HDDで絶対にやってはいけないこと

物理障害が疑われる場合のNG行動:
  • ❌ 何度も電源を入れ直す(傷が広がる)
  • ❌ 冷凍庫に入れる(結露でショートのリスク)
  • ❌ 強く叩く・振る(ヘッドがさらに傷つく)
  • ❌ 市販のデータ復旧ソフトを試す(物理障害には無効・悪化のリスクあり)
  • ❌ 自分でネジを外して開封する(クリーン環境なしの開封は復旧不能になる)
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この記事を書いた人

1991年、親に購入してもらったPC-9801DX2と、説明書に記載されていたN88-BASICのトランプのサンプルコードをきっかけにITの世界へ入る。1996年にはLinux環境下でNetscapeを用いたインターネット接続を経験し、HTMLに関心を広げ、初めてのWebサイトを作成。MS-DOSからWindows、Mac、Linuxまで、OSの変遷とともに現場経験を蓄積し、2001年にPCサポート事業を創業。以来25年以上にわたり、地域企業のITインフラを支えている。

現在は、PC・ネットワーク・サーバーなどのITインフラ構築に加え、電気工事士として電気回路の設計・施工、空調工事まで幅広く対応。ソフト・ハードの論理的な課題解決から、配線・電源・空調といった物理的インフラ整備までを一貫して担う。

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