今回は「PCが起動しなくなった」という修理依頼でお預かりしたところ、HDDにヘッド吸着という重篤な物理障害が判明し、PC修理とデータ復旧を並行して実施した事例をご紹介します。
目次
- 状況:起動しないNECデスクトップPC、バックアップは長期間なし
- 診断:Seagate ST250DM000に物理障害(異音・モーター停止)
- ヘッド吸着とは何か
- クリーンベンチでの開封処置
- データ吸い出しとAFT HDDへのクローン作成
- PC修理完了・納品
- 物理障害HDDで絶対にやってはいけないこと
状況:起動しないNECデスクトップPC、バックアップは長期間なし
法人のお客様よりNEC製デスクトップPCが起動しなくなったとのご連絡。確認するとバックアップはしばらく取られておらず、業務データが失われると業務継続に支障が出る状況でした。

お預かりしたNECデスクトップPC
診断:Seagate ST250DM000に物理障害
内蔵HDD(Seagate ST250DM000・250GB SATA)に通電すると「ビービービー」という異音が発生しており、スピンドルモーターが回転していない状態でした。
| 症状 | 推定原因 | 対応方法 |
|---|---|---|
| カチカチ音(クリック音) | ヘッドの繰り返し退避・読取失敗 | クリーンルーム開封・ヘッド交換 |
| ビービー音・モーター停止 | ヘッド吸着(今回) | クリーンベンチ開封・ヘッド退避処置 |
| 全く音がしない | 基板故障・電源系統の断線 | 基板交換・部品補修 |
| 認識するが遅い・エラー多数 | 不良セクタ多数 | 専用ツールでセクタバイセクタ読み出し |
ヘッド吸着とは何か
HDDの磁気ヘッドは通常、プラッタ表面に触れずに浮上した状態でデータを読み書きします。電源オフ時はヘッドが安全な退避場所(ランプ)に移動しますが、何らかの原因でプラッタ表面に貼り付いてしまうことがあります。これをヘッド吸着と呼びます。
通電のたびにモーターとヘッドにダメージが蓄積し、プラッタ表面に傷がつき復旧不能になるリスクがあります。
クリーンベンチでの開封処置
クリーンベンチ内でHDDを開封し、ヘッドを安全な位置に退避させる処置を行いました。処置後、HDDが正常に認識されることを確認しました。
データ吸い出しとAFT HDDへのクローン作成
ヘッド退避処置でHDDが認識できるようになったら、できる限り速やかにデータを別のHDDへ転送します。処置後のHDDは非常に不安定で、いつ再度認識不能になってもおかしくないためです。

データ吸い出し・クローン作成作業中
今回のHDDはAFT対応品でした。適切なアライメント調整を施したクローンHDDを交換用HDDへ複製しました。

交換用HDDへのデータ複製作業
PC修理完了・納品
復旧したHDDのWindowsシステムを修復し、PCに組み込んで正常起動を確認。データも完全に保持された状態で納品しました。
物理障害HDDで絶対にやってはいけないこと
- ❌ 何度も電源を入れ直す(傷が広がる)
- ❌ 冷凍庫に入れる(結露でショートのリスク)
- ❌ 強く叩く・振る(ヘッドがさらに傷つく)
- ❌ 市販のデータ復旧ソフトを試す(物理障害には無効・悪化のリスクあり)
- ❌ 自分でネジを外して開封する(クリーン環境なしの開封は復旧不能になる)
